東京高等裁判所 昭和28年(ツ)12号 判決
上告人
木内キヤウ
被上告人
津山花世
〔抄録〕
賃貸借契約による賃料が数額を明示して合意で確定されている場合は、地代家賃統制令に基く家賃の修正率が告示された場合でも、約定賃料は別段の特約のない限り、右修正率によつて当然増額せられるとは解することができず、賃貸人において借家法第七条によつて賃借人に対し増額の意思表示をした場合に初めて増額せられるものと解するのを相当とする。
借家法第一条の二による解約申入については、正当事由の存することが解約の有効要件に外ならないのであり、有効になされた解約の申入によつていつたん消滅した賃貸借契約が、その後の事情の変動によつて、その正当性を失い解約申入が無効に帰し,又賃貸借契約が復活するというようなことのあり得ないことは、上告人の所論のとおりである。原判決の認定するところによれば、昭和二十二年三月二日に被上告人に到達した正当事由による上告人の解約の申入の効力を判断するについて、上告人側の事情と共に被上告人側の事情をも認定し、
そのさい控訴人は長男と共に本件家屋に居住しているからその当時の住宅事情からすれば、被上告人は本件家屋全部の明渡には応じがたいけれども、少くとも一部明渡には応じ得る情況にあつたと、一応判断している。しかるに更に進んで被上告人の世帯人員が漸次増加し、その後五年半余を経過した第二審の口頭弁論終結の昭和二十七年十二月九日当時、被上告人夫婦の外、長男夫婦、孫、次男の外一人の同居を合計して六、七名が居住しており更に本件家屋内に結婚媒介を目的とする白合会のあることをも参酌して、正当事由の存否を判断して六畳の一室のみについて解約の効力を認めているのである。故に上記説明のように、昭和二十二年三月二日から解約申入後六ケ月を経た同年九月二日当時において効力を発生した解約の申入の効果が、被上告人側の事情が右認定のようにその後五年半余を経過し、その家族の増加したことによつて、解約の効力の一部でも変動したのだとすれば、その判断は誤まつているといわなければならない。原判決は、上記のように昭和二十七年十二月九日当時の上告人と被上告人側の双方の事情を比較考量して正当事由の存否を判断しているから、この点において、原判決の上告人の家屋明渡請求の六畳の間を除く部分の請求を棄却した部分は、破毀を免れない。